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【本紹介】石井仁 著『魏の武帝 曹操』

ブログ開設一発目ということで、最近二度目の読破をした本を紹介したいと思います。

著者:石井仁
タイトル:『魏の武帝 曹操』
出版社:新人物往来社
出版年:2010

著者の石井仁氏は魏晋南北朝史が専門で軍制史に深い方です。
タイトルにある曹操(155~220)は中国後漢末の人物で、
三国志を知っている方なら名前はご存知かと思います。
この本では曹操という人物の環境や、出世までの道のりを詳細に、しかし手放しに絶賛はせず、
動乱を勝ち抜いた人間として、その要因はどこにあったのかを魅力的に書かれております。
また専門用語は、わかりやすい解説を付けていたり、巻末の系図や地図は研究者でも
多用でき、研究書でありながらライトな読み物としても満足のいく本だと思います。

で、書いてるうちにここで終わってもいいかなぁと思ったのですが、
このブログの存在意義が薄れるので(そもそも無いようなきがするけれど)
章立てで解説兼感想といきたいとおもいます。

・第一章 濁流に生まれて
第一章は、曹操の祖父曹騰の出自から始まります。
「濁流」とは当時の「清流」と自称(諸説あり)していた、儒教を重んじる人達に対する呼び方であり、
一般的に、宦官や外戚(皇后の一族)またそれに組する人達を指します。
曹騰は、宦官であったために曹操は「濁流」の出身であったわけです。
その濁流であった曹騰ですが、清流派の人物を多く推薦します。
この点について石井仁氏は、一章で鋭く追求します。

また、曹氏の婚姻関係にも着目。
同姓不婚、異姓不養(違う苗字の養子は取れない)のタブーを曹氏が二重に犯している点に
問題意識をおくのは、研究者ゆえの視点と言えるでしょう。
同時に曹氏と夏侯氏の家系にも触れているので、これらの問題点が浮かび上がります。

・第二章 曹操の起家
第二章は、曹操がどのようにして身を起こしたのかを書かれています。
当時の中国はコネや家柄がモノを言う社会であったために、
曹操にいくら能力があっても、そう簡単には起用されないのです。
しかも宦官の孫となれば聞こえはよくありません。
しかし、第一章であった曹騰と清流派の関係から発生した繋がりが影響した点など、
あまり取り上げられない曹操の若き日やコネが明らかになる章です。

・第三章 挙兵
第三章は曹操が反董卓連合に参加する時期について書かれていますが、
最初は霊帝ついて書かれています。
霊帝(168~189)とは、後漢末の皇帝で12代目(数え方によって差異あり)
霊帝は、一般的に官をお金で買えるようにした買官制度等からに愚帝とされています。
(買官制度では実際に総理大臣クラスの地位を売った例もあります)
石井仁氏は、霊帝を再評価する立場にあり、この本では軍制改革について検証しています。
ちなみに、氏は買官制度に関しても別の論文でその意義について論じています。
機会があればその論文も紹介したいと思いますが。
そして、曹操は霊帝の軍制改革における諸制度を継承した、という
新しい視点を打ち出しました。おそらくこの視点は研究者としては、
石井仁氏以外に詳細な検証を行ってる人物はいないと思われます。

・第四章 群雄への道
第四章では、曹操が徐々に勢力を拡張する様子が書かれています。
また、縁の下の力持ちの一人荀の出自や家系について検証が行われており、
なぜ曹操に仕えたのか、また曹操をして「君は私の子房だ」と言わしめたのか、
ある意味キーパーソンともいえる人物の「キー」の部分が丁寧に解説されています。

また、「軍師」という言葉についての解説、
曹操の徐州大虐殺を曹操の失敗と位置付ける点、
覇権を争いの土台を固めていく曹操の行動が集約されています。

・第五章 天子奉戴
天子奉戴とは「皇帝を君主として奉ること」であります。
何のことかというと、189年に霊帝が亡くなると首都洛陽で政変が起こり、
その結果董卓(?~192)が政権を握ることになりました。
皇帝の献帝は僅か9歳なために実権はないに等しく、
董卓の死後も近臣達に振り回されて、曹操が奉戴する時には洛陽にいました。

天子奉戴はメリットも大きいのですが、デメリットも多く
その一つとして、皇帝直近の近臣達があげられます。
皇帝を奉戴した以上、皇帝をないがしろにするわけにもいきませんし、
裁量権も制限される可能性があります。
そうまでして得たメリットを存分に活かした様子を見ていける章です。

・第六章 中原を制す
お待たせしました、官渡の戦いです。
しかし、ただ官渡の戦いといっても、その前哨戦である白馬の戦い
また、袁紹がどのような施策をもって官渡の戦いにまで至ったのか。
三国志のターニングポイントとも言える大決戦ですので、
やはりお互いにそれなりの下準備を整えての決戦です。

また、先の第五章で述べた天子奉戴のデメリットが早くも現れてきます。
皇帝近臣の董承(?~200)のクーデター未遂事件が起こります。
董承は『三国志演義』だと忠臣として描かれていますが、
どうも実際のところは、群雄と同じく機会さえあれば天下に覇を唱える
そんな人物ではないだろうか、と疑問が浮かぶ人物であります。

中原を制した曹操と近臣達の活躍を見て楽しめるでしょう。

・第七章 赤壁の敗戦、そして魏王へ
お待たせしました第二弾、赤壁の戦いです。
…なのですが、意外と赤壁の戦い自体はあっさり終ります。
しかし、タイトルにあるように、赤壁敗戦後に曹操を待ち受けていた
過酷な試練をメインに書かれています。

敗戦という失敗によって落ちた威名を回復するのは並大抵ではありません。
しかし、それをやり遂げて漢王朝に代わる魏王朝建国への礎を築く
曹操の後年の戦い、最後に曹操の死をもって本は終ります。


三国志の専門研究家における、曹操を網羅した本というのは数が少なく、
また、曹操を主体に書く本で小説的にならない本は少ないものです。
曹操と言えば、三国志演義の影響が強く悪役の代名詞であったり、
また、劉備や孫権と違い、曹騰のような有名人がいるために、
ボンボンの出というイメージがありますが、決してそういうことはなく、
曹操もまた乱世を生き抜いた群雄ということが、この本からわかります。

また研究書という側面もあるので、一読だけでは終わらず
何度も読み直すことで、さらなる理解が得られると思います。
三国志を読み始めて、もう少し深く知りたいな、というファンであったり、
曹操を研究したい、という研究者にはうってつけの本でしょう。

ちなみに、初出版年は1995年でお値段的には少し高めだったのですが、
去年に文庫版がでたので、お手軽に買える点もイチオシします。

魏の武帝 曹操 (新人物往来社文庫)魏の武帝 曹操 (新人物往来社文庫)
(2010/08/06)
石井 仁

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奥戸ソウマ

Author:奥戸ソウマ
FEZではクルスガワ名義のほうが多いです。
基本工具書は以下を使用しています
漢書、後漢書、三国志、晋書
資治通鑑、建康実録
(すべて中華書局標点本)
三国志学会
魏晋南北朝史研究会の会員

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